石巻市牡鹿町

宮城県石巻市ひたちなか市姉妹都市になっている。そのためひたちなか市役所が募集した石巻市への義援金や救援物資の支援を行ってきたが、一度自分の目で現地の様子を見て、体を動かしたいと思っていた。ひたちなか市では週末にボランティアバスを出していたが、仕事の都合で土日が休みでなくなってしまったので参加できなかった。それなら個人で現地に行ってみればよいのだが、石巻市の災害ボランティアセンターは、個人のボランティア受付を行っていないとのことだった。
そこでインターネットやTwitterでいろいろと情報収集をしたところ、牡鹿半島にある石巻市牡鹿ボランティアセンターが個人ボランティアでも受け付けるとのことだったので、牡鹿半島に行くことにした。

仙台のホテルを5時ごろ出発し、約80km、2時間で牡鹿半島鮎川浜にある牡鹿公民館に着いた。来る途中に見た石巻市内は、広範囲に渡って津波の跡が見られた。牡鹿半島に入ると入り江ごとにある集落がまるごと流されている光景が広がっていた。

牡鹿総合支所がある鮎川浜の港。地盤沈下により岸壁が海水面と同じ高さになっている。

牡鹿公民館も津波の被害にあり、電気は仮設電源、水道もタンクに溜めた水を流すものだった。この公民館の2階にボランティアセンターの事務所がある。

朝8時半にミーティングがあるというので集合した。参加したのは20名ほどか。すでに何日も泊まり込みで活動している人がほとんどのようだった。初参加の僕が受付用紙に記入を終えたところでミーティングが始まった。ボランティアセンターのリーダーから今日の活動内容の説明があり、主な作業は側溝清掃となった。
活動場所までは参加者の車に分乗していく。僕の車にも2名が乗り込んで小渕浜というところに行った。

ここにある側溝に土砂やゴミが詰まっているので、それらを取り除く作業なのだが、この側溝がまた予想外に深いものだったので苦労した。幅の狭い側溝に土砂が押し込まれて堅くなっている。大きめの石や瓦があるとスコップも通りにくい。ツルハシでほぐしてスコップですくうのだが、掘っても掘っても底が見えない。深くなるとスコップも効率が悪くなる。底が見えないうちにお昼の時間となってしまった。

これが側溝。脇に掻き出した土砂がたまっている。

今日は天気もよく、日差しがきつい。海に近い場所で日陰になるところもなく、小さな小屋の陰で休憩した。

休憩の後で作業を再開しようと立ち上がると少しくらくらと来た。熱中症にならないように少しペースを落とそう。

気がつけば途中から応援部隊も加わっていたが、みんなで分担を決めて作業を行う。やっと見えた側溝の底は、深さが1m以上はあったのではないだろうか?僕は途中から掻き出した土砂を土嚢袋に詰める作業を行った。海に近いので風が吹くと涼しく感じるのが救いだった。

夕方になり側溝清掃の作業を終了とした。今日だけできれいにできた場所はほんのわずか。とても1日では終わらないので、明日以降も引き続きこの作業を続ける必要がある。

牡鹿公民館に戻り道具の清掃を行う。公民館の脇の坂をあがったところには石巻市の牡鹿総合支所があり、ここには電気も水道も来ている。

牡鹿総合支所から見た鮎川地区。左手前に見えるのが牡鹿公民館。

本日までの活動となったボランティアが帰っていくが、僕は今晩は泊まっていく。泊まるところは公民館の2階。広間に畳が敷かれていて、ボランティア参加者の仮設宿泊所になっているのだ。ただし食事は自前で用意する必要がある。僕はキャンプ道具一式を持っていったので、自炊することにした。

その前に、ボランティアのリーダーから、公民館に残った人たち数人の手を借りたいとのことだったので、再び昼に作業を行った場所に行った。きれいにした側溝にはふたが無く、落とし穴のようになってしまっているので、ふたを被せに行くとのこと。本来のふたはどこかに流されてしまっているのだろう。土砂が埋まっている間はふたが無くても問題が無かったのだが、きれいにしたらしたできちんとふたをしないと危ない。行政の方でも手が回らないので、ボランティアセンターに委託しているようだった。

蓋を閉めた後でもう一件さらに作業があった。個人宅にキャンピングカーが届くので庭に設置するのを手伝うとのこと。親戚が避難してきて手狭になった部屋を補うためにキャンピングカーを入手したそうだ。作業の合間に住民の方に話を聞く。このあたりには鹿がいて鳴き声がよく聞こえるとのこと。だから牡鹿半島なのか。

すっかり暗くなってやっと作業が終了した。ボランティアセンターに戻り、夜のミーティングを行った。このボランティアセンターでは、宿泊するボランティアメンバーも交えて今日の作業の報告と改善点などの意見交換を行っているのだった。人口が少ない地域で街からも遠くはなれたボランティアセンターは少人数な分だけアットホームな感じだった。センターのスタッフも市の職員という訳ではなく、ボランティアで運営しているようだった。やはり様々な地域に行って見て感じることが勉強になる。

ミーティングが終わると各自食事やシャワータイムとなる。公民館に水道は無いけど、仮設のシャワーがあり、運営料として200円で利用できるのだ。
公民館の1階が自炊スペースのようになっていて、何人かで一緒に食事にした。この雰囲気は昔北海道を旅行していたときに利用していたライダーハウスと同じ感じだった。付近の人口の少なさや、津波で流されて視界に入る家が少なくなったことも相まって北海道を旅行しているような錯覚に陥った。