3.11とアーティスト: 進行形の記録

水戸芸術館で開催されている現代美術展、今回は東日本大震災後のさまざまな現代美術家の活動の記録を展示する、「3.11とアーティスト: 進行形の記録」というタイトルの展示。

水戸芸術館自体も東日本大震災で館内に被害を受け、休館を余儀なくされた。他にも茨城県内でたくさんの被害はあったのだが、福島、宮城、岩手の東北3県に比べたら規模が違いすぎる。

1年以上も過ぎてやっとこのような企画か、と一瞬思うが、振り返るにはそれだけの時間が必要だったのだ。そして東北で開催するには生々しすぎ、都会で開催するには温度差が大きすぎる。だからこそのここ茨城での開催の意味があると思う。

アーティストの活動の記録といっても、一市民としてボランティア活動に従事した記録もあれば、被害の記憶をとどめるために作品を制作した記録、被災した人や地域に勇気を与えるための活動記録など、その内容は多種多様に渡る。まさにアーティスト個人の考え方がその作品に現れたもので、まぎれもなくすべてがアート作品だ。そしてそれらは今も進行形で続いている。

展示は立体作品、写真作品、映像作品などさまざまだが、映像作品もすべて最初から最後まで見たのでたっぷり3時間かけて鑑賞した。僕も個人的な支援活動で福島、宮城、岩手に足を運んだので、その時の記憶が何度もよみがえり、涙を流しながらの鑑賞だった。

最後の映像作品は、暗くした部屋の中の壁一面に写る森の中の風景。動きがほとんどなく写真かと勘違いするほどの静かな作品だ。夜明け前後の時間帯らしく、だんだん日が射してくることでこれが写真ではないことを示している。しかしこれは単なる風景映像ではない。最後に出てくるのが撮影地の緯度、経度、高さ、そして放射線量。これは福島県飯舘村で撮影した作品だったのだ。目に見えない放射線のために人が住むことができなくなっている場所がある、その怖さがこの静けさによって強調されている。そんなことを考えさせられる作品だった。

展示は12月9日まで。ぜひ多くの人に見てもらいたい展示だ。

3・11とアーティスト: 進行形の記録
2012年10月13日[土]から 2012年12月9日[日]まで
http://arttowermito.or.jp/gallery/gallery02.html?id=331