ひたちなか海浜鉄道スリーナインふたたび

ひたちなか海浜鉄道が舞台の芝居、「ひたちなか海浜鉄道スリーナイン」。
先週観に行ったばかりですが、もう一度観たくなって追加でもう1枚チケットを買って最終日の最終公演を観に行ってきました。
 
もう公演が終わったので以下はストーリーについて触れたいと思います。

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この演劇は勝田駅の1番線にある湊線のホームで受付をします。すでに到着している2両編成の列車のうち1両は通常の車両で、もう1両が演劇が行われる団体専用列車となっています。すでに中には女性の俳優さんが乗車して演技をしています。
整理番号順に並んで車掌さんに切符にハサミを入れてもらい車両に乗り込みます。実はこの車掌さんも役者さんなのです。
そしてもう一人の男性の役者は観客(乗客)の列の最後に並び、一緒に車両に乗り込みました。
車掌以外の2人がこの物語の主人公のようですが、最初はどういう設定なのかわからず、帰省した乗客なのかと思っていましたが、どうやら違うようです。途中の金上でもう一人の女性の俳優さんが乗ってきました。そう、実際の列車の動きに合わせて役者が乗ったり降りたりしてストーリーが進むのです。小道具には金上に実際にあるお菓子屋さんのお菓子が出てきたり、那珂湊と勝田が合併してるとかの地元ネタを挟んだり、最近できた新駅、高田の鉄橋駅だとか殿山の踏切から海が見えるとか、車窓風景にリンクしたセリフが出たり、まさにこの湊線でしか演じることができない演劇が繰り広げられていました。
 
終点の阿字ヶ浦近くで乗り込んできたもう一人の登場人物は、那珂湊駅の近くのレストランの売り子という設定でしたが、実際にそのレストランで作った湊線公式スイーツのパウンドケーキを販売していて、話がうまいので僕は本当に地元の人かと思ってしまいました。
 
阿字ヶ浦で一旦観客は下車します。復路も芝居は続くのですがその間約2時間はまち歩きの時間となっています。
この時間を利用して劇団の俳優さんが案内するまち歩きツアーというのがあって、どんな風に案内するのだろうと思って先週は地元民の僕も参加してみました。すると僕も知らなかったような小さな古墳だとか、商店を案内してなかなか面白いものでした。参加者は遠方から来た人も多いようだったので、ところどことろは僕が補足して説明してあげました。
 
そして今週はそのツアーには参加せず、一人でぷらぷらと散歩をしましたが、先週は寒くて食べるのを断念した干しいもソフトクリームを食べるべく、阿字ヶ浦温泉のぞみの休憩所に行きました。その前に時間はたっぷりあるので、ビールとおつまみを注文しました。偶然にも隣に演劇列車に参加した人がいたので少しお話をしたりして、のんびりとしていました。

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集合時間が近づいたので阿字ヶ浦駅に戻り、また整列して帰りの列車に乗ります。
 
復路になるとなんとなく設定がわかってきます。実は最初に勝田駅から乗ってきた2人はすでにこの世にはいない幽霊のようなものなのでした。そしてある特別な切符を持つとその間だけこの世の人にも見えるようになるというのです。でも以前のことを知られないように振舞わなければなりません。男性は初めてその切符を使って会いたい人に会いに来ました。そして途中で金上から乗車した女性というのが主人公の妻だった人なのでした。それがわかると往路の会話の意味がわかりました。でも勝田で乗っていた女性の方はこの世の人からは姿が見えていないようです。その理由も帰りに判明しました。彼女はかつてのパートナーと再会した時に切符に書かれていた注意事項を破り、自分が死んだ恋人だということを明らかにした瞬間、その姿は永遠に消えてしまい、この湊線を降りることなく魂だけが彷徨い続けていたのです。
 
なんだかとても悲しいストーリーでした。そして湊線の旅も終盤、幽霊の男性とかつての妻も別れの時が来てしまいます。かつての夫とは知らずに会話していた妻も別れるのがつらく、降りる予定の駅を一駅乗り過ごします。でもその一駅の間、言葉はありません。ただ列車がガタゴトと進んでいくばかり。もう見ている僕たちも引き込まれてしまいます。
 
そうして列車は終着駅の勝田に到着し、僕たちも現実の世界に戻ってきました。
 
劇場で観る芝居は全てが作り物の世界ということがわかって観るものですが、今回のように実際に走っている列車の中で演じられる芝居を観るのは、想像以上に面白く、とても不思議な感覚でした。
ちなみに劇中の音楽はアコースティックギターによる生演奏と生歌というこれもライブ感覚溢れるものでした。
 
これでもうこの芝居は終わりなので、勝田駅のホームでは演出家の方や役者さんにサインをもらったり、一緒に記念撮影をしてもらったりしました。
 
この演劇を上演したシアターキューブリックは初めて観ましたが、これまでにも銚子電鉄や琴平電鉄などなんどかローカル線演劇を上演しているとのこと。今回のお客さんも県外からの方が多くいたようでしたが、わざわざ出かけてきてこの演劇を観に来るというその気持ちが今ではわかります。もしまたどこかで次の芝居を上演することがあれば、僕もそれを観るためだけに旅行したくなりました。
 

 

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最後に関連情報。

この演劇列車は、観客は勝田と阿字ヶ浦を1往復するだけですが、実は1日に3回公演がありました。その間何人かの役者さんは途中駅から乗ったり途中駅で降りたりするのです。どうやって3回も上演することができたのか、その舞台裏を解説した記事がありましたので紹介します。

news.mynavi.jp

 

それから、上演中は撮影禁止でしたが、毎日新聞が写真特集を組んでいたので、こちらで紹介したいと思います。

mainichi.jp