県北芸術祭(5)常陸太田

常陸太田市の残りの作品を見てきました。
まずは市の中心部、鯨ヶ丘地区の梅津会館に行きました。

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この建物は昔の市役所だそうで、常陸太田出身の実業家がお金を出したそうです。この地域で活躍した常陸佐竹氏を中心とした歴史を展示したのが梅津会館1階での深澤孝史さんの作品です。

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常陸太田は昔から周りの地域の中心地でしたが、佐竹氏から徳川氏へと支配者が変わったことで、歴史の連続性が途切れているとの指摘が印象に残りました。
 

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梅津会館2階にはニパン オラニウェーさんの作品です。ベピーパウダーを使って茨城県の各地域の地図を立体的に描いた作品なので、室内にはベビーパウダーの甘い匂いが漂っていました。地図は必ずしも茨城県全体を表しているのではなく、部分部分で繰り返し配置されているようです。

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よく見ると勝田駅周辺を見つけることができました。
 
梅津会館の窓にはピンク色の紙が貼られて文章が書かれていましたが、鯨ヶ丘地区の他の商店にも同じようなピンク色の紙が貼られています。

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これが原高史さんの作品で、それぞれにはその商店の住人たちが語る自分の過去や街の様子が書かれています。テレビのドキュメンタリーなどで証言映像がありますが、それの活字版のようなものです。一般の人がお店の人にいちいち話を聞くことはありませんが、文字となって表に貼られているので、だれでも読むことができます。どれも昔は街が賑やかだったと証言しています。それを読む人も、昔の街の様子を想像することができます。とても興味深い作品でした。
 

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次はSPREADの作品。人の1日において何をしていたかを色で表現する作品です。人間だけでなく動物なども含まれていますが、生まれた日の赤ちゃんとか臨終の人、東日本大震災当日のことなどがありました。
 

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これは北澤潤さんのリビングルーム。以前水戸でも開催された、住民が日用品などを持ち込んで思い思いの場所に展示するというプロジェクトです。元の持ち主はバラバラですが、それが一つの空間に置かれることで意外な交流が生まれる、というもの。あまり事前に下調べをしないで来てしまいましたが、こういう作品だと自分でも何か持って来ればよかったなと思いました。
 

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市街地から離れたところにある休耕田で展示されているのが井上信太さんの作品です。開放的な野外に、2次元の動物が多数展示されています。

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目の前ばかりでなく、遠くに見える畑の中などにも展示されていました。この写真の中にも実は作品が展示されているのですが、これは実際に現地で見ないとそのよさがわからない作品だと思います。
 

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時間に余裕があったのでさらに次の作品を見に行きます。県北の代表的な観光地、龍神大吊橋にチェ ジョンファさんの作品があります。買い物した時にもらうレジ袋などをたくさん使った魚のようなオブジェです。山の中で陸に上がった魚が口をパクパクしているようでちょっとシュールで面白かったです。
 
神大吊橋の近くにあるもう一つの作品は、よく見たら温泉の中にある作品のようで、今回はお風呂の用意をしていなかったので行くのをやめました。
 

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最後にもう一つ、鯨ヶ丘に戻って、飴屋法水さんの「何処からの手紙」の3つ目の招待状に書かれた場所に行きました。今は営業していない割烹旅館「若柳」がその舞台です。招待状には実際にレーサーだった旅館の息子さんの話が書かれていてその資料室を見ましたが、それだけでなく割烹旅館としての歴史も紹介されていました。この日見た原さんの作品と同じように、常陸太田という街の歴史を感じさせるものでした。かつては栄えていた常陸太田の街も今は少し寂しい感じですが、街の底力はまだまだ衰えていないと思います。今回初めて鯨ヶ丘に行きましたが、これからも時々は訪れてみたい街でした。