京都 赤垣屋

出張で京都に泊まることになったので、ホテルは三条にした。
三条から歩いていける川端通りに「赤垣屋」がある。ここは太田和彦「居酒屋味酒覧」に載っている居酒屋だが、居酒屋ファンの間でも人気の高い店の一つなので、行くのが楽しみだった。

新幹線で京都に着いたのが夜の9時ごろ。ホテルにチェックインして早速赤垣屋に行った。入り口近くのカウンターが空いていたのでカウンターに座るが、右手や奥の方に小上がり、個室などがあって結構大勢の人が入れそうな店。内装は古い民家のような雰囲気で、渋い茶色が似合う。新幹線の中で弁当を食べ、ビールを飲んできたのでそれほどお腹は空いていないけど、いきなり日本酒は頼みづらく、まずは生ビールを小グラスに、冷や奴とはも落としを梅肉ソースで注文した。ビールを飲みながら改めて店内を見渡すと、カウンターの別の席では学生のグループらしい会話が聞こえてくる。奥の小上がりでは、クラシック音楽の楽器を抱えた団体さんが何かの打ち上げのような感じで賑やかにしている。暑いので店の入り口は開け放っている。直接は川の流れは見えないものの、土手の向こうには鴨川が流れていると思うと、風流な気分にもなる。なんとも京都らしい組み合わせである。

ビールがなくなったので、お酒を頼む。お酒の種類はほとんどなく、冷やを頼むと名誉冠の常温となる。関西では冷やは冷酒ではないのだ。グラスにしますか、徳利にしますか、というので、雰囲気を出すために徳利でお願いすると、一杯目だけは店の人が杯に注いでくれる。京都の古い居酒屋で杯を傾けるのもいいものだ。カウンターには夏のこの時期でもおでん舟もあり、なかなかおいしそうだが、これ以上食べる気分にはないので残念ながら注文しなかった。

お店の人は、年配のおじさん2人が、一見怖そうな顔をしているが、絶妙なタイミングで掛け合いながら注文をこなしているのが気持ちいい。静謐で緊張感のある居酒屋というのもあるが、やはりお店の人が楽しそうに働いている姿を見ながら飲むほうが楽しい。

酒を1合飲み終えたところで勘定とする。そういえば店の中のメニューには値段が書いていなかったことに気がついた。それでも会計時には店の人が注文した品を読み上げながら計算していくので、問題はないと思う。詳しい値段は忘れたが、三千円くらいだったろうか。

料理の写真は食べている途中のもの。写真としては食べる前に撮るのがいいのだろうが、せっかく出されたものをすぐに食べないのも失礼ではないかと思ってしまい、それに実際に食べてみて満足したものを記録に残したいという気持ちもあるので、まずは手を付けてしまうのだ。
だけど食べてから撮る写真はご覧の通り、ちょっと見栄えが良くない。ちょっとしたジレンマだ。


その後はホテルには戻らず、花見小路界隈を散歩しながら、バーにでも入ろうかと思ったけど、やはり知らない店に入る勇気はなく、以前何度か行ったことのある和ダイニング「なかぎし」に入った。ここに来るのは半年かそれ以上ぶりだろうか、それでもお店の人は顔を覚えていてくれた。祇園に馴染みの居酒屋ができたのがうれしい。このお店の主人は実はプロボウラーで、この日は昼間ボウリングの大会かなにかがあったらしく、僕以外の客はすべてボウリング関係者のようだった。なのであまり話にはついていけなかったけど、京都で飲んでいるというのはそれだけで楽しい。