「斜交」

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水戸芸術館で、近藤芳正さん主演の舞台。
昭和38年に発生した「吉展ちゃん誘拐事件」の取調べをモチーフにしていますが、登場人物の名前は実際の事件とは変えられています。
この事件の取調べを行っていたのは昭和40年6月末から7月初めにかけての10日間です。ビートルズが日本にやってくるちょうど1年前でした。ということは、NHK連続テレビ小説ひよっこ」の世界と同じ時代です。「ひよっこ」では悪い人が一人も出てこない明るく楽しい世界が広がっていましたが、こちらは暗い取調べ室が舞台でなかなか罪を認めない犯人に対して取り調べる刑事が怒鳴ったり時には手を出したりする世界です。
 
犯人は福島の貧しい農家の生まれ、貧乏なせいで靴もろくに履けず足が細菌にやられて足を引きずって歩くようになったとのことです。だからと言って4歳の子供を誘拐して殺害する、というのは断じて許されることではありませんが、時代の光と影を感じさせる事件だったと感じました。
 
近藤芳正さんの舞台は以前にも見たことがありますが、その時とは全然違って緊迫感が溢れる芝居をしていました。
 
上演が終わって劇場の外に出ても、しばらくは放心状態になるくらい迫力のある演劇でした。
 

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