「僕たちの好きだった革命」

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毎年夏に水戸芸術館ACM劇場で行われる水戸市芸術祭演劇フェスティバル。いつもは演劇フェスティバル実行委員会の作品を見るのですが、今回は日程が合わなかったので茨城大学演劇研究会の作品を見てきました。茨大の作品を見るのはこれが初めてかもしれません。
 
演目は鴻上尚史原作の「僕たちの好きだった革命」。紹介文を読むと1969年で高校で革命とあるので、描かれるのは激しかった学生運動のことでしょう。1969年生まれの僕としては興味のある作品でした。
 
開場して劇場の中に入るとすでにステージには役者たちがなにやら集まって様々なセリフを口にしています。さっそく1969年の騒然とした雰囲気を出しているように見えましたが、セーラー服の女子高生の足元をよく見ると何人かはルーズソックス姿でした。ルーズソックスが女子高生の間で流行ったのは1999年だったでしょうか。これからどんな話が始まるのかワクワクしながら開幕を待ちます。
 
物語は2019年の拓明(たくめい)高校の文学部部室からスタート。母校の高校教師として登場した日比野は、1999年に書かれた同級生の記録を発見します。そこからはその記録を書いた小野未来が語り手となり、1999年に遡ります。
 
未来のクラスにやってきたのは1969年の学園紛争で機動隊と衝突して意識を失ったものの奇跡的に回復し、47歳にして拓明高校に復学した高校生山崎。1999年の時代に、1969年当時の熱量を持って同級生たちに体制批判を行う山崎に対して同級生は冷ややかな目を向けます。それでも未来はそんな山崎に共感していきます。
 
1999年には僕はもう社会人として働いていたので当時の高校生の様子はわかりませんが、1969年と1999年の高校生の気質の差がよく表現されていました。見る前は大学生の演劇だからと多少甘く見ていたのですが、高校生役、教師役、そして47歳の高校生を見事に演じていて感動しました。
 
1960年代はビートルズを聴くのは不良とされいていたのに、1999年の教科書にビートルズが載っていることに驚いた山崎。僕も中学生の頃にビートルズを知り、音楽の教科書にYesterdayが載っていたことに興奮したので、その気持ちがよくわかります。BGMにそのYesterdayが流れてフィナーレを迎えた時は思わず涙が出そうでした。
 
セリフの中で山崎がシュプレヒコールアジビラなどと言っても意味がわからない同級生。逆にムカつくと言われても胃が痛いのかと思う山崎。折りたたみの携帯電話(PHSか?)やウォークマンのような携帯音楽プレイヤーなどの小道具もうまく時代を感じさせてくれました。拓明高校という名前もハンドマイクを通して聞くと革命とも聞こえるのは偶然ではないでしょう。
 
昭和、平成に起こったことを令和となった今見ているとさらに時代の空気の差が際立ちます。
 
終演後にロビーに出て素顔に戻り友人たちと話す役者たちを見ると、先ほどまでの姿とは打って変わって現代の学生の顔に戻っていました。学生演劇も侮れません。また機会があれば見てみたいと思いました。
 

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