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音楽劇「夜のピクニック」

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まち歩きの次は水戸芸術館で音楽劇「夜のピクニック」を観てきました。
以下、ネタバレになりますがこれは舞台作品で今の所再演の予定もなく、しばらくは観ることができないので書いてしまいます。
 
 
まず原作と違って榊杏奈が主人公です。そして話は高校生だった主人公たちが卒業してから10年後にOB,OGとして歩く会のボランティアスタッフとして参加する、というシーンから始まります。全体の流れとしては当時はニューヨークに引っ越してしまい歩く会に参加できなかった榊杏奈が、原作の主人公である甲田貴子の母親聡子から当時の歩く会のときに起こった出来事を聞く、という設定になっていました。でも歩く会のシーンは原作と同じようなストーリーです。ですから原作そして映画で演じられたシーンも舞台で演じられました。
 
この音楽劇の脚本を書いたのは水戸芸術館の演劇部門の監督である高橋知伽江さんですが、この設定にはとても驚きました。制作発表の記者会見で榊杏奈役の吉川友さんが主人公として挨拶していて、原作と違うなと思っていましたが、こういうことだったのか、と納得しました。
 
そしてこの劇は音楽劇ですから出演者たちが歌を歌います。原作でも印象に残るフレーズ「みんなと夜歩く それだけで どうしてこんなに特別なんだろう!」が美しい歌声となって劇場内に響きます。そして何と言っても素晴らしかったのは特別出演の甲田貴子の母親役、元宝塚の剣幸さんの歌声です。水戸芸術館の小さな舞台で剣幸さんのソロを何度も聴くことができたのは感動的でした。
 
原作本では舞台が作者の恩田陸さんの出身校である水戸一高であることは一切触れられておらず、映画でも撮影こそは実際の水戸一高でも撮影されたにもかかわらずやはり架空の高校となっていましたが、舞台ではしっかりと水戸一高の行事であることが示されています。原作では「歩行祭」となっていたのも実際の「歩く会」という名称になり、それどころか校歌を歌うシーンでは本物の校歌が歌われていました。水戸一高は僕自身の出身校ではありませんが、客席には当然水戸一高の卒業生もいたようで、そのシーンでは驚きとも苦笑ともとれるざわめきがありました。
 
だからと言って卒業生にしかわからないストーリーかというと、水戸一高の話とは知らずに発売当初に買って感動して一気読みした原作本の魅力の通り、誰にでもありそうな高校時代の思い出が普遍的に描かれているので、自分の高校時代を思い出して共感できるのです。
 
 
榊杏奈は舞台の最初に客席の方から登場します。そしてその足元には靴がありません。その後甲田聡子と会うシーンで伏線が張られて後半にその理由が明らかになりますが、実は榊杏奈はこのときすでにこの世にはいない存在なのでした。ずいぶん大胆な脚色でしたが、思えば原作でも遠くニューヨークにいて歩く会には参加していませんでした。なのでその場にいない、という意味では原作にも通じる設定です。とても大胆で鮮やかな脚本でした。見事です。それともう一つ、物語でキーポイントとなる榊杏奈のきょうだいが、原作では弟でしたが、この劇では妹になっていました。名前も原作の榊順弥に対して劇では榊順でした。これはどういう意図があったのでしょうか?
 
そんな脚本を実際の舞台に仕立てた演出は深作健太さんです。著名な映画監督深作欣二さんのご子息ですが、実は深作欣二水戸一高出身です。健太さん自身は東京生まれですが、出演者にも茨城出身者が多くいる今回の音楽劇の演出をするのにふさわしく、そして本とも映画ともまた違った魅力を味あわせてくれました。
 
映画と違い舞台は一度上演が終わったら2度と同じものは観られません。こんなに素晴らしい作品がたったの1週間で終わってしまうのがもったいないです。
 

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劇場には原作者の恩田陸さんからの花束が飾られていました。
 
夜のピクニック」は原作も映画も大好きですが、また一つ好きな作品ができました。
 
 
そういえば、原作に登場した人物以外の舞台オリジナルの登場人物の名前が、「応援団長 内原」「実行委員長 綾瀬」とかこの辺はまあありそうな名前だな、と思ったのですがACMの劇団員たちの役名が「OB勝田」「教師藤代」「OB高萩」などとなっていてなんかどこかで聞いたことがあるような。よく見たら常磐線の駅名と同じになっていたのでした。これも高橋さんのアイディアなのでしょうか?とてもお茶目です。
 
 
音楽劇「夜のピクニック」特設サイト
 
 
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