トークイベント「教えて先輩!―コレクション作品に迫る」①曽根裕《19番目の彼女の足》

水戸黄門まつりが行われているこの日に、水戸芸術館トークイベントがありました。

水戸芸術館が開館したのは1990年でしたが、当時は僕は県外の学生だったので、僕が水戸芸術館に行くようになったのは卒業して家に戻ってきた1992年ぐらいからでした。

現代美術にも興味はあったもののまだ知らないことばかりでしたが、1994年から95年にかけて、「現代美術のABC+D」という現代美術入門講座みたいなものがあり、その講師が現代美術部門の学芸員である黒澤伸さんでした。黒澤さんの企画する現代美術展はとてもワクワクして面白いものばかりでしたが、黒澤さんは1997年に水戸芸術館を退職して、金沢21世紀美術館の開館に携わり、今は「金沢芸術創造財団 事業課 芸術・交流アドバイザー」として金沢にいるそうです。

 

その黒澤さんが、水戸芸術館に来てトークイベントを行うというのです。

その告知を知ってぜひ行きたいと思っていたのですが、最初はその日が水戸黄門まつりの日と同じだったとは気がつかなかったのでした。

 

以下、トークイベントで話してくれた内容と補足情報です。あまりまとまっていませんが、メモをもとにつらつらと書いておきます。

 

黒澤さんは水戸芸術館が開館する前の1989年に水戸芸術館に来て、立ち上げに関わります。

・名称について、ミュージアムでもギャラリーでもない、センターだ、ということで現代美術部門の名称は現代美術センターとなった。

水戸芸術館がユニークだったのは、開館当時、学芸員に美術館経験者が一人しかいなかったこと。

学芸員募集時も、学芸員資格はいらない、ということでここなら自分のやりたいことができると思い応募した。

水戸芸術館の所蔵作品は、ここで開催した美術展のために作られたものが中心。

・その作品が作られた時はその作品の意味がわからないこともあるが、後からわかるかもしれない。だから残す責任がある。それがここで活動している責任。

 

今開催されている展示作品のうち、曽根裕さんの「19番目の彼女の足」が黒澤さんが担当した作品なので、今日はその話が中心です。

こちらが曽根さんの作品。

黒澤さんと曽根さんの最初のコンタクトは、曽根さんがシャッタースピードが1年間のカメラについての相談だったそうですが、曽根さんのアトリエにあったスケッチを黒澤さんが見つけ、それが発展したのがこの作品だそうです。

 

・自転車のように見えるけど、自転車というと曽根さんは怒る。これはコミュニケーションツール。

・最初は4台くらいを、曽根さんのアトリエがある世田谷の美術館の外で実験したが、イメージ通りには乗れなかった。

 

ここからは当時のプロモーションビデオやドキュメンタリービデオを見ながら。

・もともとは母国語が違う19人で動かすイメージで、どうやって19人が動かすかの伝達実験だった。

・水戸では何度も練習したが、ある時2つ繋げて一人で乗ることができるようになったが、なぜだかはわからなかった。それを見た他の人もできるようになって、人類の進化を見た。

・この作品を水戸芸術館で買おうとなった時に、予算は***万だったのが実際には倍の***万だった。

・予算オーバーが分かった時、お隣の音楽部門で***したことがあったので、同じようにすればいいのでは、と上司に言ったら、とても怒られた。

・その後、この作品は海外にも貸し出したが、最初は同じようには乗れなかった。

ということで、スウェーデンのマルメというところでの映像を見せてくれました。

 

今日の司会を務めた竹久侑さんによると、今でも貸出要望があるそうですが、どうやって動かすかを説明するのが大変なので、今は貸出はしていないそうです。

ちなみに、竹久さんもずいぶん長く水戸芸術館にいると思っていましたが、黒澤さんが水戸芸術館を出てから来たそうで、直接一緒に働いたことはなかったそうです。

 

今日のトークでは、「19番目の彼女の足」ができた頃を知らない人たちが来ることを想定して準備していたそうですが、来ていたのは当時のことを知ってそうな人ばかりだったと苦笑いしていました。

そんな僕も黒澤さんに会えるのを楽しみにしていた一人。「19番目の彼女の足」の公開時はたぶん見ていないと思いますが、イベントが終わった後、「現代美術のABC+D」の当時のパンフレットにサインをしていただき、写真も撮ってもらいました。

 

黒澤さんについては、少し古いですがこちらに詳しく載っていました。

水戸芸術館時代の話もしっかり語っていました。

www.web-across.com

 

この日のイベントの情報。

www.arttowermito.or.jp

 

「19番目の彼女の足」公開時の情報。

www.arttowermito.or.jp